書感:「愛国」という名の亡国論(マスコミの報道を鵜呑みにしてはいけません)

書籍『「愛国」という名の亡国論 --- 「日本人すごい」が日本をダメにする』を読みました。

タイトルが危なっかしい感じですが、内容自体はデータや事実に基づいて書かれていると思います。 著者が元朝日新聞の元記者という経歴の為か、朝日新聞に関する指摘が多すぎる傾向がありますが、総じて日本のマスコミの問題点、その影響の危険性を訴えています。

 

この書籍では、まず初めにいくつか典型的な日本礼賛番組の嘘について例を挙げて指摘しています。その上で、愛国報道の多くは、日本を何かとこじつけて「世界一」であると主張し、それには以下のパターンがあると言います。

  • 自己満足型「世界一」パターン:海外ではそこまで価値を認められていないが、日本人だけが価値があると思い込んでいる点を外国人に見せつけて驚かし、そのリアクションををもってして「この分野では日本が世界一」だと自己満足的な優越感に浸るパターン。秒単位で発着時間を管理する山手線、礼儀正しく列に並ぶ乗客、とか(秒単位の正確性とか行儀よく列に並ぶことにそこまでの価値を感じない国の人も多いのでは?)。
  • 勘違い型「世界一」パターン:まったく異なる2つの事象を強引に結びつけ、因果関係があるかのように解釈してそれを「世界一」という結論に導くパターン。かつて「日本が(GDP額で)世界第2位の経済大国になれたのは技術力のおかげ」とか(実際には、日本が先進国第2位の人口大国になったから・・・)。
  • 手柄横取り型「世界一」パターン:個人の業績や、記録が高く評価されただけなのに、その評価を「日本人」全体にあてはめようとするパターン。非常に優れた技を持つ職人を持ち出して、「日本の技術力が高い」という結論に持っていく(いや、優れてるのはその個人の方であって日本人すべてではないですよね?)。

 

こうした発想がでてくる淵源について、著者は戦前の優生学などにルーツがあると主張しています。また、こうした報道を繰り返すマスコミは、必ずしも悪意があるわけではなく、単に視聴率が欲しいという単純な動機によるものとも言っています。

ただ、こうした偏った報道を浴びるように見続けると、徐々にそれが真実だと思い込むようになり、ファシズムの台頭につながりかねないと警告しています。

 

日本人がそこまで愚かであるとは思いたくはありませんが、私個人の経験でも、いくつかの国も人たちと一緒に仕事をした際に、日本人の同僚の多くが「○○○人はいい加減で信用できない。」と口々に言っているのを聞き、「そんなの個人個人違う話で、日本人のTさんやIさんだって酷いもんじゃない」と思っていたのを思い出しました。

ファシズムとは違うと思いたいですが、日本人=優秀、○○○人=怠惰・いい加減という先入観で固まっていました。実際には、その業務で一緒にいた○○○人も人によって全然違くて、仕事が丁寧かつ時間に正確な人もいれば、時間にルーズで作業もいい加減な人も両方いました(日本のメンバーも同じです)。

 

ともあれ、これでもかと様々な事例を出して、日本礼賛的な報道の問題点を挙げるとともに、戦後の報道量を分析し、愛国←→反日を振り子のように行き来しながらその量と極端さを増してきている現状とその原因に対する考察を述べています。

朝日新聞社の歴史に基づく、戦前からの思想の影響については、正直、あまり賛同できないところではありますが、自画自賛報道が増えることによる悪影響は確かにあると思いますので、日本のマスコミの問題点を客観的?に見るという点で読む価値はある本だと思います。

 

個人的には、日本のマスコミは、必要以上に細かい失敗を責め立てて萎縮させることやその割にはある事象の本質的な問題点には全く触れないところの方が問題だと思っています。

例えば、コロナ禍の日本の対応を狂ったように責め立てるニュースバラエティ番組を見ていると、頭が痛くなってきます。

お亡くなりになられている方がいるので、日本政府の対応が素晴らしい、万全だという気は全くありませんが、マスコミがワクチン勝ち組だとして見習うべきだとさんざん持ち上げるイギリスやアメリカは、人口当たりのコロナ感染者数や死亡者数も一時期は非常に多かった訳ですし、アメリカは今(当ブログ執筆時点)でも日本よりだいぶ高い状況が続いています。

www.yomiuri.co.jp

これまた非常に個人的な意見ですが、他国と比べればかなり感染者数が少ないのにも関わらず、コロナに対応するための十分な医療体制を築けていないことが日本のコロナ対策の問題点なんではないでしょうか?

実際にコロナ対策に携われている医療従事者の皆様は、家に帰ることもできないギリギリの戦いをされている方も多いと聞きますし、自身も感染リスクを抱える中、心身をすり減らして対応されていると思いますので、そうした現場の皆様の問題ではないと思います。

日本の医療制度の問題なのか、危機対応能力の問題なのか分かりませんが、この辺りをマスコミの方には冷静に取材&分析して対策案を含めて報道して欲しいのですが、素人の芸能人がわーわーぎゃーぎゃー騒いでいるのを見ると、井戸端会議に公共の電波を使うな!と言いたくなってきます。(上から目線で批判ばかりしている司会者さん達は一体何様なんだろう?)

 

すみません。書籍の内容から外れてしまいました。。。

日本のマスコミの問題点を愛国報道という観点から分析している書籍ですが、メディアリテラシーを持つことの大切さを考えるきっかけになると思いますので、もし興味をお持ちなられたら、読んでみてください。