書感:メタボリック・スパイラルの衝撃(メタボ ⇒ 死の四重奏 and/or アルツハイマー)

書籍『メタボリック・スパイラルの衝撃 - 内臓脂肪がアルツハイマー病を引きおこす』を読みました。

東京大学医学部卒医学博士で、財団法人 ぼけ予防協会(現在は、日本認知症予防協会)の会長だった大友英一氏による「メタボとアルツハイマー病」について記載した書籍です。 

 

2008年発行とやや古い書籍ですが、いかにメタボリック・シンドロームアルツハイマー病の原因となるか、その予防に取り組むべきかについて警告した書籍です。
様々な論文を例証に、メタボがアルツハイマー病にかかるリスクを高めることをいろんな角度から紹介し、かつ、その予防に早くから努力すべきことを、とにかく強調しています。

メタボリック・シンドロームの定義は、ここで書く必要もないかも知れませんが、以下を満たすとメタボとされます(国によって基準が違うそうです)。
◆必須要件
 ・腹囲(へそ周り):男性85cm、女性90cm

◆いかの内2つ以上を満たす(1つの場合は、メタボ予備軍)
 ・中性脂肪 150mg/dL以上 and/or HDLコレストロール40mg/dL以上
 ・収縮期(最大)血圧 130mmHg以上 and/or 拡張期(最小)血圧 85mmHg
 ・空腹時高血糖 110mg/dL

そもそもメタボリック・シンドロームとは、メタボリズム(Metabolism=新陳代謝)+シンドローム(Syndrome=症候群)を組み合わせた用語で、「新陳代謝に関連した症候群(病気)」という意味です。

新陳代謝異常と密接な関係のある肥満、糖尿病=糖代謝異常、高脂血症=脂質代謝異常、そして、それらから引き起こされる高血圧が組み合わされた状態を指すようです。これらは、動脈硬化を引きおこし、やがて死に至る病脳梗塞脳卒中(脳出血)、狭心症心筋梗塞の原因になるため、「死の四重奏」とも呼ばれているのだとか。

 

そして、メタボの人は、アルツハイマー病にかかる確率も上がるということを、いろんな角度から紹介していますが、一言で言えば、太る(=食べ過ぎ and/or 運動不足)/喫煙/深酒はダメよってことですね。アルツハイマーに限らず、様々な病気の原因になる悪習慣です。。。

 

そして、予防するための食習慣と運動習慣について触れていますが、実践方法はあまり細かく書いてなかったです。でも、途中に記載されていた「ぼけ予防10ヶ条」(下記)とともに書かれていた一文『高齢になってから突然健康になろうとしても、それは無理です。健康な体を手に入れるために、よいことはいまからやる。言い訳は無用です』が、印象に残りました。

そりゃそうだ(長年、不摂生を積み重ねて痛めつけた体が瞬時に良くなるなんてことはない)よね・・・と思いつつ、なかなか悪習慣から抜け出せない自分を反省しています(肥満解消に努めようと思いつつ、某ファストフード店でフライドポテトなどを食べてしまっていたり・・・汗)。

 

◆ぼけ予防10ヶ条※

  1. 塩分と動物性脂肪を控えたバランスのよい食事を
  2. 適度に運動を行い、足腰を上部に
  3. 深酒とタバコはやめて、規則正しい生活を
  4. 高血圧、肥満などの生活習慣病の予防・早期発見・治療を
  5. 転倒に気をつけよう。頭の打撲はぼけを招く
  6. 興味と好奇心をもつように
  7. 考えをまとめて表現する習慣を
  8. こまやかな気配りをしたよい付き合いを
  9. いつも若々しく、おしゃれ心を忘れずに
  10. くよくよしないで、明るい気分で生活を

※. この書籍が出版された当時はこの名称だったようですが、いまは「認知症予防10ヶ条」に変わっているようです。時代ですね。

 


正直に言って、全般的に読みづらい(論文等の紹介が多いので、超具体的な数値や論文執筆者の名前が多い)のですが、最後の方にあるQA集はあれこれ言い訳をしてメタボ脱却の努力をしない人の声(俺か?)への反論(説得?)がまとめられていて良かったです。
回答を書いてしまうと怒られそうなので、ここでは、どの様な質問が載せられているかを記載しておきます。

  1. 時間を拘束されるサラリーマン稼業、動きの少ないデスクワークではやせられない?
  2. 体を動かす時間や空間をどう見つければよいか?
  3. おカネを払ってスポーツジムに行かなければやせられないか?
  4. せめて何をすればいいのか? 何から始めればいいのか?
  5. 健康食品や医療機関におカネを払わなければ体質は改善できないのか?
  6. 毎日疲れていて、これ以上、どうやって運動すればいいのか?
  7. 何から何まで意識的にコントロールしないと健康維持はできないのか?
  8. 健診結果を見ても馴れっこになって驚かなくなった
  9. 食べすぎているいるわけではないのに太るのはなぜか?
  10. 太りやすいライフスタイル解消のための、ちょっとした習慣とは?
  11. すでにいくつかの改善方法を試したが挫折ばかり。どうしよう?
  12. 日中、仕事で結構動きまわっているつもりなのに太るのはなぜか?
  13. 定年後、時間ができてからやせるのでは遅いのか?
  14. 不健康なデブと健康的なデブはあるのか?
  15. 治療が必要となるラインはどこか?
  16. アルツハイマー病治療薬開発で心配はなくなるのではないか?

あ、でも1つだけ、Q13だけは重要なので回答の抜粋を書いて置きます。

◆Q13.定年後、時間ができてからやせるのでは遅いのか?
『絶対に遅い。これは断言できます。
 (中略)
 脳梗塞心筋梗塞などの動脈硬化に起因する疾患の予防は、高血圧、高脂血症などのコントロールをきちんとすることで、ある程度可能ですが、動脈硬化そのものは非可逆的で進行を止めることは不可能だということです。
 定年になってからなどといっている間も動脈硬化は確実に進みます。
 かなり深刻な状態になってから、いままでのライフスタイルを苦労して変えようと努力しても、大変なわりに得られる効果は少ないのです。
 (中略)
 もう一度繰り返しましょう。
 定年後では絶対遅すぎます。また、定年後では、すべての生活改善、運動実践は困難であり、効果も大変少なくなるということをしっかり認識してください。』

 

そして、最後に筆者は、こう締めます。
The sooner, the better.


個人的には、メタボの組み合わせが「死の四重奏」と呼ばれていることが、けっこう衝撃でした。死にたくねぇなぁ・・・

 

ともあれ、もし、メタボとアルツハイマーの関係について、知りたいと思った方がいたら、読んでみても良いかもしれません。
(近年は、他にもさまざまアルツハイマーに関する書籍や情報が増えていますので、この書籍じゃなくても良いかもしれませんが・・・)