書感:なぜか「仕事がうまくいく人」の習慣4.0(すぐやる! 全部やる! 繰り返す!)

書籍『なぜか「仕事がうまくいく人」の習慣4.0』を読みました。 

 

ホワイトワーカー個人の生産性に絞った能率向上プログラム(Personal Efficiency Program)を説明・解説した書籍の第四版(4th Edition)です。製造業のプロセス改善やチームや部門単位の生産性向上の施策ではなく、ホワイトワーカー個人の生産性に特化した手法であることが特徴です。今でこそ、個人の生産性向上のための手法もいろいろ提唱されていますが、この書籍の最初のバージョンが出た当時は、(調べていませんが)恐らく纏まった手法はとても少なかった頃ではないでしょうか?

 

私自身もこの最初のバージョンを若い頃に読み、非常に感銘を受けたのを覚えています。今回、たまたま第四版が出ていることを知り、入手し読み返してしまいました。UPDATEはされていましたが、本質的な生産性向上の考え方は変わっていませんでした。

第四版の出版は2009年で、今からすると説明に使われているツール類は古いところはありますが、有益であることは変わらないと思います。(ちなみに、当書籍で説明されている能率向上プログラムは、個人の生産性向上施策としてはかなり初期のものの一つであり、数十万人にトレーニングが実施された実績のある手法です)

 

とは言え、この書籍に書かれている具体的なひとつひとつの項目(下記)にはあまり目新しいところはないと思います。


◆基本的なお作法

  1. 作業環境の整理整頓(作業に必要な道具を揃える。きれいに整理整頓し、必要なものがすぐに見つかるようにする。その際に、溜まった書類やメールに関連する作業を全て処理するか、いつやるかを決める)
  2. 機械的に行う作業を決める(決まった時間にメールのチェックや配達物の処理などのルーティン業務を行う)
  3. 作業の計画を立てる(基本は週単位→日単位)
  4. 各作業をちゃんと終わらせる(先送りしたことは確実に実施できるようにリマインドする、任せた仕事は定期的に再確認する)

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◆各種Tips
 A. メールの処理
 B. ミーティングのやり方
 C. 改善(業務のやり方がより効率的になる様に日々見直し改良していく)
 D. モバイルワーク
 E. 管理者業務(歩き回りマネージメント)
 F. 整備(業務を効率的に実施できる環境の整備を定期的、かつ、頻繁に行う)

 

ひとつひとつの項目やTipsの中には、今となっては古いものも含まれているかも知れません。

しかしながら、この書籍の真骨頂は個々のTipsではなく、とにかく「すぐやる!」ことと「全部やる!」ことにあります。そして、「すぐに」「全部やる」ことを「繰り返し実施し良い状態を保つ+日々改善を続ける」ことにあります。

 

書籍の最初の方に書かれているのですが、仕事を「重要度(高・低)」と「緊急度(高・低)」に分けて考えるフレームワークは、結局は緊急度"高"の業務に駆逐されて「重要度高」の作業が終わらないどころか、先送りしたことにより問題が大きくなり、緊急度高の業務を発生させ続けることになるということです(趣意)。

 

そして、『「仕事がうまくいく人々」は”今すぐにやる”をモットーにしている。仕事をするうえで守るべき最も重要なルールは、いったん手にしてしまったら、もしくは、いったん目に留めてしまったら、その業務に対する取り組みを始めなければならないというものだ。』、『やるつもりがないなら、仕事に目を向けてはいけない。仕事を目に留めたなら、今すぐにやらなければいけない。』とも書かれています。


つまり、仕事を先送りすることよって生じる無駄と問題を未然に防ぐというのが、「すぐやる」方式の本質なのだと思います。

もちろん、その他のTipsも十分役に立ちますし、疎かにしてはいけません。魂(神)は細部に宿るというか、具体的に実践するための知恵が詰まっていますので。


本書にはさまざまなテクニックが詰まっているので、その全部を紹介することはできませんが、仕事の「先のばし」ぐせを退治する九つの鉄則というものを簡単に紹介しておきます。

  1. 書類を読むのは一度ですませる。
    メールや書類を読んだその時に処理してしまえば、"あとでやる"ときに読み直す必要がなくなる。2回読めば、読む時間は2倍になるし、後回しにしたことによって、督促されたり、問題に発展すれば、もっともっと処理に時間がかかるようになる。→これ、本当に役に立ちます。メール見た瞬間に返信するようにするだけで、あとでやるつもりで忘れてた・・・をかなり減らせます。

  2. 重要でない仕事を先に終わらせる。
    雑務(細々とした、"重要度の低い"業務)も溜まれば、精神的な負荷になる。
    やらなければいけないことがあると意識するだけで集中力がそがれる。
    また、たくさんある雑務に優先順位を付けるのは無駄な作業である。(溜めるから効率を考えないといけなくなる)
    物事というのは、やるべきか、やめるべきかのどちらかなのだ。

  3. 問題は小さなうちに解決する。
    大きな問題の大半は、小さいうちに解決しなかったことによって大きく成長する。(趣意)

  4. 仕事の邪魔になる原因となる業務を、真っ先に処理する。
    集中して仕事をしようとすると「邪魔が入る」のは、邪魔が発生する原因を潰していないから。(趣意)

  5. やり残したことを片づける。
    既に仕事が後手に回り、残務が溜まっている場合は、それをまず片付ける必要がある。(趣意)

  6. 過去ではなく、未来を目指して仕事を始める。
    業務が溜まっていると意識が過去に向いてしまう。現在・未来に意識を向けるためには、残務を片づける必要がある。
    わたしたちの意識の容量には限りがあるため、これは重要なポイントになる。

  7. 「時間がかかるから」を先のばしの言いわけにしない。
    本当にどのくらい時間がかかるかは、やってみないと分からないことが多い。(趣意)
    マーク・トウェインの言葉
    蛙を二匹飲み込まなければいけないときは、大きい方から飲み込むこと。それと、あまり長いあいだ見つめないことだ。

  8. 先のばしから解放されれば、もっと元気になる。
    「すぐやる」方式に従って、仕事を片づけていくことで、仕事から受けるおびただしい量のストレスと不安を追い払うことができる。
    より大きな自身がつき、自尊心にも磨きがかかるだろう。

  9. 意思決定における決断力を培う。
    一般に、成功を収めた人たちは、決断にほとんど時間をかけず、その決断を変えるときに時間をかける。
    ある時点を過ぎると、時間をかけたからといって、正しい決断をくだせる可能性が高くなるわけではない。
    全力を尽くしたとしても、決断したことの何パーセントかは、まちがいだったという結果になる。
    わたしは、決断力のある人たちが、まちがった決断をくだすのを見てきた。おもしろいことに、そういう人たちは、ほとんどいつも、自分たちの決断の意図するところ--つまりそれが目的なのだが--を、最後には実現してしまうのだ。
    決断をするという行為そのものが、その決断が正しいかどうかより重要で、その決断の結果にも、影響を与えると言っていい。

 

そして、間違った完璧主義より、『すぐやる』習慣を身につけることの方が重要なのだと。
「相手がわれわれに期待している品質とは、どの程度のものだろうか?」を考えれば、(もし出来上がれば)完璧だけど、出来てこないものを期待する相手は(まず)居ないことを認識するということですね。
また、相手が期待する品質は相手に聞いてみないと分からないので、まずは作って、さっさと見てもらうということも大事だと思います(個人のホワイトワーカーの作業なので、大量生産して後戻りできないということはあまりないハズ)。

 


ともあれ、私自身、若いころにこの書籍の初版に出会って、かなり影響を受けました。

「すぐやる」姿勢が評価され、同年代のメンバーよりも早めに昇格したり、実際に重要な業務を任せられたりと多くのリターンを得たと思います(仕事の好き嫌いも言いませんでしたし)。

新しい版では、多少、新しいツールのことが追加されたり、管理周りの話が追加されていた様に思いますが、それも役立ちそうです。また、個々のTipsも(例がやや古いのを除けば)非常に有用なので、ぜひ見ていただけたらと思います。

 

そして、読んだらぜひ書かれたことを「すぐやって」みてください。

 

ではでは。