書感:世界史で読み解く現代ニュース(少し分かったけど、やっぱり難しい・・・)

書籍『世界史で読み解く現代ニュース』を読みました。

 


テレビのニュースでおなじみの池上彰さんと「世界一受けたい授業」で歴史などの先生として出演していた増田ユリアさんが共同で執筆した書籍です。

 

2014年の本なので、最新の内容ではないですが、現代の世界のニュースでとにかく話題になる「中国の海洋進出」、「中東問題」、「地球温暖化」と、「フランス革命の影響」の大きく4つのテーマが取り上げられています。

本書の構成として、各テーマごとに淵源となる歴史パートの説明を増田さんが、それを受けて現代にどの様な影響があったのかを解説するのを池上さんが行う形式となっています。

 

元々、この本を読もうと思ったキッカケは、中東問題をニュースで見てもその背景が良く理解できずモヤモヤ感が強かったからというのと、難しいニュースを分かりやすく説明することで定評がある池上さんの書籍なら、世界史嫌いの私でも分かるようになるかな?と思ったからです。

 

結果的には「少しは分かったけど、十分には理解できていない」というのが、正直な感想です。

増田さんパートで、歴史的な説明がなされるのですが、その中に出てくる国名や都市名を見ても地理が頭に入ってないので、スッと読めないのですよね・・・
人名は聞いたことがある人も多いのですが、やはり読みづらい。高校時代、世界史嫌いだったんですよね。

また、池上さんパートの解説は理解はできるのですが、歴史的観点からのみ書いているので、その時点での政治的背景などが分からず、納得感が薄いことも多々ありました(いや、そういうコンセプトの書籍なんだから仕方ないんですけどね)。

 

と、否定的なコメントを書いていますが、読む前よりも確実に各ニュースの背景の理解は深まりましたので、当初の目的のいくらかは果たせたと思います。
また、ページ数も200ページちょっとの新書で気軽に読める文量なので、全部すっきり分かろうという方が欲張りなんだと思います。前提知識が足りなさすぎるというのもありますし。

 

さて、それでは、ざっくり各テーマの概要と感想を書いていきたいと思います。

 

1.中国の海洋進出

このパートでは、中国の海洋進出の歴史的経緯として、15世紀、明の時代に中国が欧米の大航海時代に先駆けて、東南アジア、インド、中東まで海洋進出(朝貢貿易を推進)していた歴史を紹介しています。また、その遠征を率いた鄭和という将軍のことを紹介しています。

当時の中国の皇帝だった永楽帝は、勢力を大きく拡大はしましたが、各国の文化に寛容だったようです。鄭和自身も、中央アジアからの移民の出身でイスラム教徒だったようで、民族や宗教に関係なく人々と平等に接することを旨としていたようです。

 

一方、現在の中国についてですが、海洋進出を図るのは、この鄭和の時代と同様の海路を支配する「21世紀海上シルクロード」を再現しようという側面があるとの解説がなされています。「かつての夢よ、もう一度! この再現が、中国の野望」なのだとか。。。

やり方は鄭和の姿勢とは、だいぶ異なるとの嫌味?も書かれていますが、正直、かつての再現だけが、いまの中国の野望の理由にはならないだろうと思います。かつて、そのような時代があったことは分かりますが、その懐古趣味的な再現のために、各国が強く反対するなかで南シナ海の領海権を主張し、人工島を作り、軍事支配を進める理由としては弱すぎると思います。

それよりむしろ、エネルギー資源を中東をはじめとした諸外国に頼る様になったことでエネルギー安全保障を確保することや、国内の経済的な諸問題の解消のために近隣国を支配下に置きたいという方が納得感はあります。

また、その為の戦略として、かつて、鄭和の時代に実施した戦略を再現というか、再利用しようというなら話は分かりますのですが、かつての栄光をもう一度!というだけではない気がするので、その辺りの中国側の動機の解説もしてほしかったところです。


2.中東問題

中東問題やバルカン半島クリミア半島の問題に関するパートです。

かつて、地中海を囲んだ広大な地域を支配下に置いていたオスマン帝国崩壊後の処理を失敗したため、あちこちに紛争の火種がまかれたという話です。

 

オスマン帝国は、13世紀の終わりから20世紀の第一次世界大戦の終わりまで、約600年も続いた一大帝国だそうです。広大な地域を支配下に置いていましたが、民族や宗教、母語の多様性はそのまま認めて納税だけすれば良いよ、という緩やかな統治体制をしていました。

終盤は、フランス革命を受けた各地域の独立運動~度重なる戦争の末、次々と領土を失い、細かい国に分割され、第一次世界大戦を経て、解体されてしまいました。

 

その過程で、イギリスがアラブ人とユダヤ人に異なる約束を同時にしたことにより、バルカン半島の問題の火種が生まれ、イギリス・フランス・ロシアが秘密協定で人工的に国を分割したためにパレスチナ地域の問題が生まれています。クリミヤ半島は、ロシアが強引に編入しましたが、これは、もともとロシア人が多かった地域でもあるのと、軍事上重要な拠点でもあるということの様です。

 

このパートは何回か読み返しましたが、関連する民族も多く、イスラム教内の宗派の問題、欧州各国やロシアなど周辺諸国の干渉など、経緯が複雑なので、全然理解できませんでした。それぞれの民族や宗派の支配する・されるの歴史の積み重ねによる感情的なもつれと、イギリスの不誠実な二枚舌・三枚舌外交により、ごちゃごちゃにこんがらがってしまったということなのだと理解しました。

単純に利害が衝突しているだけではなく、負の感情の蓄積があるので、より解決を困難にしているというのは分かりますが、それだけでもないんだろうとも思っています。

資源がある地域も含まれるので、経済的な思惑もあるでしょうし、欧米とロシア(、中国も?)の代理戦争的もあるような気がします。いずれにしても、イギリス、フランス、ロシア、アメリカなどの大国の干渉が、より一層、問題を複雑化しているということは間違いなさそうです。

自分自身に中東出身の知り合いもいないので、あまり身近に感じられる問題ではないのですが、ニュースなどで惨状を見るとどうにかならないものかな・・・と思い、少なくとも何が問題なのかぐらいは理解したかったのですが、全然理解できませんでした。
この地域の問題は、ホントに難しいですね。もう少し勉強してみたいと思います。


3.フランス革命の影響

このパートは、フランス革命の経緯と、フランス革命の過程で生まれた人権宣言が各国の独立運動共産主義国の誕生にどのような影響を与えたかについて説明しています。

 

正直、フランス革命は名前は知っているけどなんだったっけ?レベルの知識しかなかったので、フランス革命の経緯についてはとても勉強になりました。マリー・アントワネットがギロチン処刑されて、王政が終わっただけの話ではなかったんですね。。。

 

それにしても人権宣言の思想が徹底されているフランスが、各国の政治的な亡命者を多数受け入れ、言論の自由が保障されていたことにより、共産主義思想や社会主義思想が花開き?、各国の革命を後押ししたというのは、全然理解していなかったので驚きでした(私が無知なだけですが)。

また、中南米の各国の独立にも影響を与え、フランスの困窮(による植民地の売却)がアメリカの領土拡大にも寄与していたというのも、意外でした。

 

高校時代は、世界史で色んな人名や事件名を覚えさせられるのが苦痛で、それぞれのつながりなんて全然理解していなかったので、あらためて詰め込み教育は良くないなぁと感じた次第です。個人的には、物事を系統だてて理解するのは好きですし、その時代を生きた人々の物語自体は好きなので、「歴史」を因果関係のつながりとか、個々の人物の物語として解説してくれていたら、もう少しは「歴史」という教科を好きになれたのではないかと思います。。。


4.地球温暖化

このパートは、地球温暖化は、18世紀イギリスの産業革命から始まったとの説明になります。

産業革命の経緯と、そのころの社会背景の説明、過重労働(児童労働含む)の問題と労働者の権利が保障されるようになっていった経緯は、なんとなく理解はしていましたが、あらためて系統だてて読むと、ちゃんと理解していなかったことが分かりました。
また、本筋の話ではないのですが、アメリカ(ペリー)が日本に来航したのは、紡績業に使う機械の潤滑油やランプの燃料として鯨油を必要としていて、その捕鯨の際の水や食料の補給拠点にしようとしたからだ、というのは全然知らなかったので、「そうだったの?!」となりました(習ったのかもしれないけど、ホントに歴史に興味なかったんですよね・・・お恥ずかしい)。

 

地球温暖化の天候への影響やその為の対策に関する議論は、今の方が危機感が強いと思いますが、この書籍が書かれた当時はまだまだ実感がない人もいたかと思うので、この7年の間に深刻になってきているな・・・と思います。

バブル崩壊やコロナ危機などにより、経済活動が停滞すると環境負荷が改善されるのは皮肉ですが、人々の行動を変えれば環境負荷を改善することはできるのですよね。

悪影響を受ける人もでてくるので、何でも抑止すれば良いとは一概に言えないのかもしれませんが、これ以上の温暖化および環境破壊を抑止・改善させるためには、一人一人のエネルギーの消費を減らす行動(省エネ、移動の削減、無駄な消費の削減、とか?)が重要なんでしょうね。一人一人にできることは小さくても、多くの人の行動が変われば、人類は人数も多いので、大きな効果も出すことができるので。とは言え、普段は便利な生活に慣れきっている身としては、なかなか難しいとも思っていますが。

 

ともあれ、だらだらと感想を書いてみましたが、ここに記載しなかった様々なエピソードで、知らなかった・・・ということがたくさんありました。

あまり歴史が得意ではない、最近の国際ニュースを見ても背景は良く分からない、という方は、読んでみる価値はあると思います。

全てを詳細に分かるという訳にはいきませんが、いろいろなニュースの背景の概要くらいはつかめると思いますので。

 

それでは、また。