書感:病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと(少しだけ医者に対する見方が変わりました)

書籍『病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと - 常識をくつがえす"病院・医者・医療"のリアルな話』を読みました。

 

11月中は非常に仕事が忙しくて(土日ほぼなし&週一以上の徹夜の連続・・・)、しばらく空いてしまいました。


さて、今回は、前回までとはガラリと変わってお医者さんの本です。

本書は、札幌厚生病院で病理診断課医長(出版当時)の市原 真(いちはら・しん)博士の連続エッセイです。

本書の企画は、『病院のリアルを「やわらかく、楽しく、ゆるく伝える」』ことだそうで、この編集者からの依頼というかお題を、市原氏が(病理医ヤンデルとして)軽妙な語り口で調理しながら、病院や医療の世界を、医療者側からの視点で伝えてくれます。

 

本書は、序章、一章:"病院"のホント、二章:"医者"のホント、三章:"病気になる"のホント、四章:"医者と患者"のホント、の全五章で構成されます。

こう並べるとなんか堅そうな感じを受けるのですが、とにかく筆者のやわらかい、ちょうどいいゆるさがある文章のお陰で堅さは微塵もありません。

と言って、ふざけてたり、おちゃらけてる訳でもないので、まじめな人が読んでも不快にはならないだろうと思います。

 

各章各項のタイトル(=編集者が与えたお題)に対して、若干斜めな回答になってることも多いのですが、全体を通して読むと、今まで感じていた病院や医療に対するイメージが少し変わって「こうやって病院を利活用すれば良いんだなー」と思ったので、ある意味、副題にある『常識をくつがえす"病院・医者・医療"のリアルな話』がちゃんと伝わってる気がします。

 

特に、医者の役割は監督みたいなもので、看護師や検査技師、その他さまざまな役割の人達と役割分担をして戦うチームの指揮していること、その為、患者の前にはほとんど顔を出さないけど、それ以外の時にどんな役割を担っているのかが分かったことはとても勉強になりました(いや、なんか単にえばりくさってるだけかと感じることも多いので・・・)。

なんだか医者に対する不信感が払拭されたというか、現代の病院のチーム医療システムに対して感じていた冷たさ感?というものが和らいだ気がします。

(あ、これは入院ベッドが20床以上ある「病院」や大学病院などの「大病院」の話で、まちのお医者さんがやってる「診療所」の話ではありません)

 

あとは、医者が提供しているサービスの内、「治療」だけに価値があるのではなくて「診断」にも大きな価値があるという話も、あらためて書かれると非常に納得感がありました。筆者自身のエピソードを通じて、自分の症状がなんであるかが分からない不安に対して、その症状がどんな名前の「病気」でどう戦えば良いかが分かると「不安」が減ることを紹介していたのですが、これには私自身も経験があるので、非常に納得感があります。

こうして文章になっているのを見るまで、「病院」は「治療」してもらいに行くところで、「診断」(だけ)をしてもらうところではないというか、「診断」だけしてもらってもあまり価値がないと考えていたので、ある意味、見方が変わったと思います。

実際に「診断」して貰ってどんな病気かを説明して貰うことで、それまで漠然と、または、強く感じていた「不安」が軽減というか、場合によっては解消されることもあるのは、自分自身も経験がありますしね。たしかに「診断」単体にも大きな価値があるなぁ、と共感した次第です。


もちろん、納得するところばかりではなく、「そうなのー?」と思うことや「いや、そこはあまり共感できないな」と思うところもあるのですが、そんなところも含めて、ゆるく楽しく読めて、かつ、医療リテラシーが上がる良い書籍だと思います(雑学的な知識も少し付きます)。

標準治療の意義や病気を治すのは患者自身であることの実際的な意味など、誰もが理解した方が良いこともたくさん書かれています。

(患者という観点からはどうでも良いような内容もあります)

 

ともあれ、私が勉強、または、参考になったと思うテーマは以下となります。

  • 病院選びの考え方
  • 大学病院と診療所の違い(役割分担)
    ↑ これまでも散々見聞きしてきたことなのですが、大学病院側の位置づけを端的にマニアックと説明しているのを見て、すとんと腹落ちしました。
  • 診断の価値
  • がんの治療~診断までの流れ・考え方
  • 医者および医療従事者と患者の関係

 

と、ここまで書いてきたのは良いのですが、この書籍の良さは全然伝わっていないと思います。

 

上記はあくまで書かれた内容の知識部分の魅力であって、この書籍のエッセイとしての文章の面白さというか、医療従事者の生態について、だとか、そーゆー側面の面白さは伝えられていません。

が、ここでそれを伝えたいと思っても、私の文章力だとうまく伝えられないんですよね。一文を切り取ってコピペしたら伝わるかと言うと、そういうものでもないところが悩ましい。1~2ページまるまるコピペしたら、少しは伝わるだろうけど、引用って範囲じゃねーだろ、それは。とも思ってみたり。

 

ということなので、もし筆者の雰囲気を知りたい方はこちらTwitterアカウントを覗いてみてください(自分で伝える努力は放棄)。

 病理医ヤンデル(@Dr_yandel)

 

もちろん、Twitter上でエッセイを書いてるわけではないので、書籍の雰囲気がそのまま分かるわけではないけど、筆者のゆるく楽しいけど役にも立つ雰囲気は伝わるかと思います。


と言う訳で、なんとなく病院に敷居の高さを感じている方が居たら、ぜひ、本書を読んで欲しいと思います。

 

それでは。


P.S.
12月は先月ほど忙しくない(予定)なので、このブログも何とか継続して定期的に書きたいと決意してますです。