書感:シリコンバレー式 最強の育て方 - 人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング(すぐには効果はでませんが「継続は力なり」です)
書籍『シリコンバレー式 最強の育て方 - 人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング』を読み返しました。
世界的な有名企業や革新的なベンチャー企業が集まるシリコンバレーで、人材管理の方法として当たり前のように採用されている「1on1 (ワン・オン・ワン) ミーティング」のやり方について解説した書籍です。
「1on1ミーティング」は、月に1~数回、上司と部下が1対1の定期的な対話を行う時間です。その中で、部下の思いを聞いたり、相談に乗ったりします。
一般的な面談と異なり「部下のための時間」であることが特徴となります。この時間を通じて、部下の気持ちがすっきりしたり、納得感を持ったり、次のチャレンジへ行動していこうとなることが重要視される点で、上司が部下を報告を受ける/指示をする/指導や助言をする面談とは大きく異なります。
この書籍では、ます、なぜいま「1on1ミーティング」が必要なのか、そして、「1on1ミーティング」の中で何を話すのかが、目的別に具体的に書かれています。最後に、これから「1on1ミーティング」を始める人たち向けに、準備~実施までの非常に具体的なTipsなどが書かれています。
全体を通して非常に分かりやすく、読みやすく纏められているので、半日~1日あれば読めると思います。また、とても具体的にやるべきことが書かれているので、この書籍を読めば、明日からでも「1on1ミーティング」に取り組むことも可能だと思います(実際に始めるには、周囲の人の理解と合意が必要とは思いますが)。
ちなみに、この書籍の対象読者ですが、基本的には部下の育成に苦労をしている上司の方になります。
でも、「1on1ミーティング」を実施している企業の方であれば、部下の方が読んでみても良いかもしれません。上司がうまく「1on1ミーティング」を運営できているか・できていないか判定できるようになるかもしれませんし、今まで以上に「1on1ミーティング」のメリットを引き出せるようになる可能性があります。
さて、具体的なやり方については本書を読んでいただきたいのですが、1on1ミーティングを実践するとどんな良いことがあるかを以下に抜粋します。
- 上司と部下の間に揺るぎのない信頼関係が生まれる
- 心身が不調で休職になるところだった部下が、早期の対策で生き生き働き出す
- やる気のなかった部下が自発的に働くようになる
- 評価査定の後、不機嫌になる部下がいなくなる
- 仕事に飽きてきた上位2割が、再び情熱を持って業務にチャレンジを始める
- 「後手の対応」から「先手の対策」へと人材マネジメントが変わる
- 部下からの「ちょっといいですか?」のミーティング時間が本当に「ちょっと」になる
- 「ビックリ退職」がなくなる
結構、広範な効果があるので、やってみようと思いませんか? 中には、該当しそうな部下は一人もいないという方もいるかもしれませんが、そうした企業は、1on1ミーティングは不要(もしくは既に実践している?)ということだと思います。
逆を言うと、ここに挙げられているようなことが多発している企業は、1on1ミーティングの導入を真剣に考えた方が良いでしょう。
ただ、実際に実践してみると、なかなか書かれている通りにはならないというか、できないというのが正直なところです。
かつて私が所属していた企業がまさに上記に挙げられた項目のほぼすべてに当てはまる会社で1on1ミーティングを導入することになったのですが、効果を出すどころか定着させることにも苦戦していました。
そんな私自身の経験から言えることは、本書にも書かれていますが、1on1ミーティングを始めても上手に出来るようになるまでには、それなりに時間がかかるということです。
また、上司側のトレーニングをキチンと実施しないと、企業の病巣をより悪化させることにつながります。(笑えない話ですが、本書で書かれていることと真逆[※]のことを行い、優秀な社員の退職が加速するという事態が一部で起こりました・・・)
ともあれ、私自身は、本書を何度も読み返し、また、本書の著者である世古氏の研修を受講したりして、試行錯誤しながら1on1ミーティングに取り組んでいました。
業績への貢献などのハッキリとした効果は感じる所まではいきませんでしたが、当時の部下達との相互理解は深まったとの実感はありました。(そして、部下のことを全然分かってなかったんだなー・・・と気付かされました)
ただの雑談に終始してしまったり、通常の業務相談になってしまったり、なかなか書籍に書かれているようにきれいには行かないことが多かったのですが、それでも1年半くらい続けていく中で部下のパーソナルな部分を知ることが徐々にできる様になり、はじめる前よりもチームの雰囲気は良くなりました(私の主観ではなく部下の感想です)。やはり業務一辺倒だと堅くなりますからね。
個人的には、普段の目先の業務から離れた会話をする中で、お互いのことを知るキッカケができたのが良かったです。なかなか業務中だと部下と個人的なことを話すのは難しいので(飲みにケーションも嫌われるご時世ですし、下手に個人的なことを聞くとパワハラとか言われかねないですからね・・・)。
あとは、1on1ミーティングを導入するときは、上司にあたる人たちの教育をしっかり行って、最低限以下のことを徹底した方が良いと思います。
- 1on1ミーティングで上司がやってはいけないタブーを明確にし、徹底する
→武勇伝を語る
→指導・助言という名の説教をする
→「こんなことやっても意味ないと思う」など上司自ら1on1ミーティングを否定するようなことを言う
など - どんなに多忙でも全部下と月に1回は必ず実施する
→人数構成が悪い企業の場合、正規役職によらず、小さいチームに分割して実施する
(1部門で100人の部下がいるのに、部長一人で全員と面談するので3ヶ月に1回しかできないと言っているところがありました(汗)) - やり方を勝手にアレンジしない
→ある部門は、チームリーダークラスの社員を上司役とし、一般社員がどのチームリーダーと面談するかを選択できるようにしていた
これだと本来の狙いである信頼関係をベースとした人材育成ができない
(上司部下間の1on1に加えて、他社員との1on1をしても良いとは思いますが・・・) - 最初から上手にできないのは当たり前なので、最低限2年間は続けるとコミットする
→できれば半年ごとにフォローUP研修を行うなどをしないと、上司力が低い会社では失敗経験が蓄積される一方で、部下の負の感情が高まりかえって離職者を増やすことにつながります - ダメな1on1ミーティングを実施している上司は、匿名で通報できる仕組みを作る(など、悪い状態を是正するキッカケを作る必要がある)
→匿名ででも誰が通報したか分かってしまう場合が多いので、通報した部下を守る仕組みは必要
&逆に問題がある部下による悪意がある通報から上司を守る仕組みも必要
うーん。。。
こうやって列記すると、実際の導入にはハードルがありますね。
上司のレベルが低い会社では、1on1ミーティングを導入する前に、上司の再教育や選別を実施してからじゃないとうまくいかないかも知れません。
私がいた企業でも、「パワハラ上司と1対1で打合せをすること自体が苦痛である。拷問以外の何物でもない」と言っている社員がいました・・・
まぁ、会社の正式な制度として全社的に導入するのではなく、自分の部門やチームだけ独自に導入することも可能なので、自分個人の取り組みとして1on1ミーティングを実施してみるのも良いかもしれません。
その際には、本書は非常に分かりやすいので、ぜひ読んでみることをお勧めします。
ではまた。
*1:※.本書では、1on1ミーティングは部下のための時間であり、上司はなるべく聞き役に徹して、指導や助言をすることすら極力抑える様に書かれているのですが、当時の所属企業では、1on1ミーティングの中で上司が武勇伝を語りまくったり、滔々と指導という名の叱責(もしくは、侮辱)を行うという拷問が繰り広げられ、結果として、より一層辞める社員が増える部署が出てしまいました・・・毒上司、恐るべし。