書感:スマホ脳(SNSの見過ぎには気を付けましょう・・・)

書籍『スマホ脳』を読みました。

 

本書は、人間の進化の観点から、人間の脳がスマホ(特にSNS)に上手く適応できないことを示した書籍です。

脳がスマホに適応できないと言うより、SNSスマホが人間の脳をハッキングしてひたすら注意を惹きつける様に作られている&使いすぎの結果として集中力が喪われたり、うつ病等につながる可能性が高まるので注意せよ、と言う内容ですね。

 

タイトルからは、スマホ使いすぎると、脳がスカスカのおバカ脳になるとかって内容かと思いましたが、そうではありませんでした。

人類の進化の経緯から、人がストレスや不安を感じる仕組みやSNSの通知が興味を引く仕組みを説明しています。また、そのことによる生活や睡眠不足、ひいてはうつ病などへの影響、とりわけ子供への影響について、推測しています(変化が早すぎて研究も追いついてない領域なので、推測にならざるを得ない)。

 

個人的には、脳がスマホSNSの通知に抗えない理由の解説が面白く、さもありなんと納得してしまいました。

 

それでは、スマホSNSの魅力に抗えない理由や、魅力に屈した結果の影響について概要を記したいと思います。

一足飛びに上記の説明に行く前に、「ストレス」、「不安」を人間がなぜ感じて「うつ」になるのかを説明した後に、スマホSNSの魅力の話に移っていきます。


まず始めは、「ストレス」です。

人類は、歴史上の大半の期間で常に危険にさらされていました。危険な動物の脅威や飢餓、病気、人間同士の暴力・殺人・・・これらの脅威に即座に反応し、素早く動き「闘争か逃走か」のどちらかを素早くできるようにしたのが「ストレス反応」で、だから「ストレス」を感じると心拍数が上がり即座に戦う or 逃げ出すことができるように体が準備をします。

また、ストレスを感じると冷静に考えられなくなりますが、これもじっくり考える前に行動せよという体の反応と考えられます。目の前に猛獣がいるのにじっくり考えてる暇はないですからね。とにかく行動を起こすことが、人類が生き延びるのに役にたったのでしょう。

言い換えると、人間(というか動物)の基本的欲求よりも、ストレス反応の方が上位に来ます。目の前に危険が迫っているのに、睡眠、消化、繁殖を優先してはいられませんので。なるほど、確かに目の前に飢えたライオンがいるのに繁殖行為をしてる場合じゃないですよね・・・。

 

 

続いて、人が「不安」を感じる理由を説明しています。

「不安」というのは、「起きるかもしれない」という脅威です。これから発生するかもしれない脅威に対して、事前に体をスタンバイさせるのが「不安」の役割です。かつては、草むらの陰から急に蛇が飛び出してきたかもしれないですし、突然、隣の部族に襲われたかもしれません。そうした時に、音やにおいやその他の何かから感じる「不安」により、突発的な事象にすばやく対処できるようにする意味があったのだと考えられます。恐らく、その意味では、ストレス反応と同じく、不安を感じる能力により、生き延びる確率が上がったのでしょう。

 

更には、「うつ病」も人類を守る反応だったのではないかと言います。

「うつ」は、食欲を減退させ、閉じこもり、性欲を失くす。それはどれも、生き延びて遺伝子を残す可能性を減らす行為にも関わらず、です。

うつを引き起こす原因として一番多いのは、長期のストレスです。古代において、長期のストレスをもたらすのは、飢餓や感染症、戦争などでした。それは、通常よりも危険で満ち溢れた状態です。その為、強いストレスに長期間さらされると、脳は危険が<b>そこら中</b>にあると解釈し、頭から毛布(があったかは分からないが)をかぶって隠れていろ、と脳が命令するのだとか。

もし脳が現代社会に完璧に適応していれば、長期のストレスを受けたらより一層実力を発揮する方向になっていたかもしれません。少なくとも、現代のストレスは、頭から毛布をかぶって隠れたところで解決はしないのだから。しかし、残念ながら、脳はその様に進化はしておらず、ストレスは「ここは危険」という意味であり、逃げるや隠れるがその解決策として取られてしまうのです。

そしてこの説の裏付けとして、うつを引き起こすことに関係する遺伝子は同時に免疫機能をキチンと作動させる役割も担っていることをあげます。つまり、免疫機能をあげると同時に、危険や怪我、感染症から距離を取らせるために、うつ状態にするのではないかとのことです。

古代において生き残ることが出来た生き物は、必ずしも強い生物ではありませんでした。上手に危険を回避し、環境に適応できた種が生き残ったのです。

その意味で、人間に備わる「ストレス」、「不安」、「うつ」といった反応も、種の存続に意味があったから残っていると言えます。

 


では、スマホSNSを使うのを止められないのは、どの様なメカニズムによるものでしょうか?

その主役はドーパミンなのだそうです。

ドーパミン」は良く脳の報酬物質(=ドーパミンが放出されると幸せだと感じるとされる)だと呼ばれるそうですが、実は、「ドーパミン」の最も重要な役割は、何に集中するかを選択させることなのだそうです。

ちなみに、満足感を与えるのは「体内のモルヒネ」である「エンドルフィン」が大きな役割を果たしているようです。ドーパミンは目の前にある美味しいものを食べるように仕向けて、それを美味しいと感じさせるのはエンドルフィンということですね。

 

さて、脳は常に新しいものが好きということはご存じでしょうか?

進化の観点では、人間は新しい知識を常に仕入れることにより生き延びる可能性を高めてきました。

天候の変化がライオンの行動にどう影響するのか。カモシカが注意散漫になる状況は? それが分かれば狩りを成功させる確率が増し、猛獣の餌食になる可能性が減る。周囲の環境を理解するほど、生き延びられる可能性が高まる。。。その結果、人間は新しい情報を探そうとする本能を得た。

この本能の裏にある脳内物質が「ドーパミン」となります。つまり、脳は、新しい情報があることが分かると「ドーパミン」が放出され、そちらに注意が行くように出来ているのです。また、結果がハッキリ分かっていることよりも、「かもしれない」ことの方により「ドーパミン」が放出されます。

これは、例えば、狩場や採集の場にエサとなる動物や採集対象の実がある「かもしれない」ときに、せっせとその場に向かった人間の方が生き延びやすかったということなのでしょう。だから、毎回必ずあたるものではなく、ギャンブルの様に時々あたるものの方が強く惹きつけれられてしまうのです。

 

その観点で、SNSは、こうした本能を巧みに利用していると言います。何か大事な更新がないか、「いいね」がついていないかを確かめたいという欲求を起こさせる様に作られています。

例えば、あなたの休暇の写真に「いいね」が付くのは、誰かが「いいね」を押した瞬間ではなく、親指マークやハートマークが付くタイミングが保留される場合があるのです。これは、私達の報酬系が最高潮に煽られる瞬間を待ち、刺激を少しずつ分散することで、デジタルなご褒美への期待値を最大限にすることにも繋がります。

こうして、スマホSNSは、利用者が一秒でも長く、より多く利用するように、行動科学や脳科学の知見を使って作られているのだそうです。

その結果、スマホSNSは集中力を妨げ、睡眠時間を削り、絶えず多くの他者との比較を可能にして「不安」を煽り、「ストレス」を与える存在となってしまっている、ひいては、iPhoneが普及したころから急激に「うつ」で診療を受ける人が増えたと主張しています。

「うつ」と「スマホ」の因果関係はまだ明確にはなっていないですが、見る専門の人の方がうつになりやすいそうなので、スマホSNS)でうつになる人は、絶えず(あまりイケてないと思っている)自分と、スクリーン内の(良さげに見える)人たちとを比較して、自己卑下に陥っているのではないかと、推察されています。

 

その他にもフェイクニュースなどにより社会の分断が促進されることや、その他の影響についても述べています。ちょっと何でもかんでもスマホSNSのせいにしすぎではないかと思いますが、まぁ、言ってることは分からなくはありません。

しかしながら、新書サイズのコンパクトな書籍なので、根拠の部分についてはそれほど明確ではありませんし、スマホSNSの悪影響に関する部分についてはそういう可能性もあるよね、くらいに捉えて、今までよりもスマホ依存度を少し減らすくらいで良いかな、と思いました。

大事な時にはスマホを別の部屋に置いてくるなど、スマホSNSを気にしないで済むようにするとかですね。(在宅勤務時に、目につくところにスマホがあると気が散るしなぁ・・・)


上手く伝えられたかは分かりませんが、本書で面白かったところは、人間の進化の過程で必要とされた「ストレス」や「不安」、ドーパミンなどの「報酬体系」がなぜ存在していて、スマホSNSが、どの様にこれらの仕組みを活用(悪用?)しているのかを解説しているところですね。


本書では、それらにどう対処すれば良いかもいくつか書かれているので、興味がある方はぜひ読んでみてください。

 

 

それにしても、最近は、タイトルのキャッチーさと内容があまりあっていない記事や書籍が多いですよね。。。まず手に取ってもらわなければいけないというのは分かるのですが、「名は体を表さない」書籍や記事はあまり好きではありません。

本書は、内容は悪くはないけど、タイトルとはあまり合ってないと思うし、表紙のイラストに至っては完全にミスリードだろうって思うので、その点では減点です。

 

ということで、SNSをただ見てるだけの人が一番不幸になるらしいので、見る専の方は使用時間を半減させるとか、1時間に5分だけ見るとか、何かしら制限を付けてSNSから距離をおくことをお勧めします。


ではまた。