書感:コンサル一年目が学ぶこと(基礎的なことだけど、だいたいどれも大事ですね)
書籍『コンサル一年目が学ぶこと』を読みました。
本書は、職業・業界を問わずに役立つ普遍的なビジネススキルを解説した書籍です。
タイトルに「コンサル一年目が」と記載されていうので、対象者を限定しているかのように見えますが、実際には
・職業を問わず、業界を問わず、15年後にも役立つ普遍的なスキルを
・社会人一年目で学んだときの基礎的なレベルから
理解できるようにするのがコンセプトです。
普遍的なスキルを基礎から学べるのはいいね、と思って手に取ってみました。
まぁ、社会人一年目どころかうん十うん年目なので、今更かも知れませんが。
さて、本書で紹介・説明されるスキルは、大きく以下の4カテゴリに分かれていて、1カテゴリ1章構成となっています。
- 話す技術
- 思考術
- デスクワーク術
- ビジネスマインド
うーん。。2の思考術の一部は社会人になって10年目くらいに会社提供の研修で学んだけど、それ以外は、誰かに教えられたり、研修を受けた記憶がないなぁ・・・
コンサル業界は、初年度からこんなトレーニングを受けるのですね(実際には、実務を通じて先輩に指導されたスキルも含まれる様ですが)。
体当たり実務経験のみの独学人生の私とは大違いだな。
若いころからキチンとこうしたトレーニングを積んで(&指導を受けて)いたら、もう少し違ったキャリアになったのかな?と思う反面、遠回りばかりしてきたけど、その分色んなダメシチュエーションを知っているのが今のキャリアにつながってる(優秀な同僚たちとは異なった側面で強みを発揮できてる)ので、あながち無駄だったとも言えないんですよね。
どんなことからでも学んで次に活かす気があればダメな経験でも活かせるし、その気がなければどんなに体系的に良い知識を学んでも役に立たないので、学んだことを活かせるように努力することが大事ですね。
また、もういい年齢ではありますが、基礎から学びなおすのも必要かな、なんて思っています。出来てるつもりで出来ていないことも多いですし、昔習ったことや独学や経験的に身につけてきたことが、今は通用しないなんてこともありますからね。。
あ、でも今回の書籍は、15年後にも使える普遍的なスキルとあるので、できてないとダメなやつばかりですね(社会人になって15年以上たってるから出来てなくても仕方ない??)。
さて、それでは、少し中身に触れたいと思います。
まずは1つ目の話す技術です。
ここでは、以下の9個のスキルが挙げられています。4うのカテゴリの中では最多です。
01. 結論から話す
02. 端的&率直に話す
03. 数字というファクトで語る
04. 数字とロジックで語る
05. 感情より論理を優先させる
06. 相手に理解して貰えるように話す
07. 相手のフォーマットに合わせる
08. 相手の期待値を把握する
09. 上司の期待値を超える
それぞれどういう意味か、なぜそれが大事なのか、実践する上でのコツというかTips的な事項、が書かれています。
こうして見ると、前回書いた雑談力とは真逆の方向ですね。これを雑談時にやったら超絶うざいヤツになりそう。。。
ビジネススキルとしては、こうした話し方は重要ですが。
06. の「相手に理解して貰えるように話す」は、中身を見ると、相手の理解度を推し量りながら話す、前提事項を相手の方が知らないと仮定してそれでも分かる様に話す(準備をしておく)という内容なので、単に話し方というのではなく、話す上にあたっての心構えと準備のところが重要なスキルです。
これ、すごく重要なんですよね。
私はよく色んな会議でファシリテーションする&議論が噛みあわない場合の仲介役になるのですが、議論がうまく行かない場合って、たいていそれぞれが話している対象が異なっていたり、前提としている背景が異なっていたりするんですよね。
なので、「こういう意図で話されてますか?」 とか、「もしかして、こういう前提だったりしますか?」、「こーゆーことを気にしているんだよね?」などと質問したり確認したりして、相互にずれている個所の明確化を図る様にしています。
場合によっては、「彼が言った○○というのは、これこれこーゆーもので、どのように役立つんです」などと、相手側が分かっていなさそうなことを補足したりもします。
また、自分が分からないことをお客様が話した場合は、「すみません。勉強不足で申し訳ないのですが、XXXってどういう意味(モノ)でしょうか?」と、素直に聞くようにしています。
と、さも出来ているかのように書いていますが、実際には、自分自身が噛み合わないを発生させている場合もあるので、気を付けなといけないですね。。
あと、08と09の「期待値の把握と超える」は、意識していても実践するのは難しいんですよね。
職場では、「期待値コントロールが大事」と言われるのですが、お客様がハッキリと期待値を言ってくれることは少ないですし、非常に高い期待値を持っていただいた場合に、それを上手に(ガッカリさせずに)下げる方法が思い当たりません。。
最初から期待値が上がりすぎない様にしろって言われるんですが、そうすると受注ができない・・・とか、私も人間なので、相手に良く思われたいという気持ちも働いたりして、期待値を引き上げるような話をしちゃいがちです。反省しないとですね。
あ、ただここでの内容は、相手が期待している内容を正確に把握して、一番重要なことを絶対に外さないことがMustで、その上で+αを出すようにしましょう、というモノです。
例えば、速度が重要で質はそこそこで良いのか、質は絶対で時間を掛けても良いものなのかを把握せずに、速度重視の時にゆっくり丁寧に資料を作っても評価されないってことですね。新人にありがちな、完璧な資料を作ろうとして(でも、新人だからそんなものハナから無理)、上司にいつまでやってんだ?って叱られるパターンですね。
それなりに年数を重ねても、ぜんぜん期日を守れない人がいますが、そんな人は評価されませんからね。。。
ITだとS/In期日を守れないパターンとか。。。(これは良くありますが)
さてはて、次は2つ目の思考術です。
ここでは、以下の6個のスキルが挙げられています。
10. 『考え方』を考える
11. ロジックツリーを使いこなす
12. 雲雨傘提案の基本
13. 仮説思考
14. 常に自分の意見をもって情報にあたる
15. 本質を追求する思考
12の「雲雨傘」は知らない人からしたらなんだこれ?ですが、以下のように、事実と解釈とアクションをちゃんと区別するということです。
(事実)「空を見てみると、雲が出ている」
(解釈)「曇っているから、雨が降りそうだ」
(アクション)「雨が降りそうだから、傘をもっていく」
コンサル初心者(もしくはエセコンサル)だと、事実と解釈がごっちゃになっていたり、解釈を受けてのアクションまたは提言がなかったりするので、ちゃんと物事を分析する時は、この3つを分けて&漏れなく提示しましょうと言うモノです。
これまでの経験上、これがちゃんと出来ていないビジネスパーソンは結構多いです。
特に、事実と解釈が分離されてないのと、アクションがない報告書は山ほど見てきましたね・・・本書にも書かれてますが、だから何?(So what?)と言いたくなるヤツです。
あと、仕事を進めるのが上手じゃない人は、10の「『考え方』を考える」も苦手なみたいです。
言い換えると、仕事の進め方を考えて設計するということなのですが、作業に入る前に、どの様に進めたら求めている答え(=結論 or成果)に行き着くことができるかという「アプローチ」/「考え方」/「段取り」を最初に考える、ということになります。
具体例がないと分かりづらいと思うので、詳細は本書を読んでみていただきたいのですが、この仕事の進め方を考えるのが苦手な人って、結構いるなぁ、と感じています。
大きな仕事・作業の場合、大まかに作業を分割して、次に着手する作業だけ細分化するなどをすると思うのですが、いきなり思いついた(?)作業にいきなり取り掛かる人っているのですよね。
犬小屋を作ってといったら、いきなり木材を切り始めるような感じで。
最初に出来上がりイメージを作り、そこから設計図を書き、必要な材料を買い集めて、それから切ったり、釘を打ったりの加工作業だろうが!と思うのですが、とにかく作る&加工作業に入っちゃう・・・材料集まってないじゃん。
ともあれ、物事をスムーズに進めたり、狙った成果を出すために必要な思考方法がこの章に書かれています。
続いて、3つ目のデスクワーク術は、以下の7個のスキルが書かれています。
16. 文書作成の基本、議事録書きをマスターする
17. 最強パワポ資料作成術
18. エクセル、パワーポイントは、作成スピードが勝負
19. 最終成果物から逆算して、作業プランをつくる
20. コンサル流検索式読書術
21. 仕事の速さを2倍速3倍速にする重点思考
22. プロジェクト管理ツール、課題管理表
正直、ここは他の章よりも重要度が低いと思います。
ただまぁ、ここに書いてあるなかで強いて重要なのを挙げるとしたら、21の「重点思考」でしょうか。
タイトルからは何のことやらなんですが、余計なことをやらずに大事なことにフォーカスするということが書かれています。
「20対80の法則(パレートの法則)」とも書かれていますが、重要な20の部分にフォーカスして作業をしましょう。残りの80は切り捨てましょうってところです。
まぁ、本当にその80を切り捨てると重要な見落としがあったりするので、個人的には、まず全体を俯瞰して重要な20を見つける(選ぶ)。そして、最初はその20に注力する。
その20がある程度出来てきたら、残りの80の中で抑えるべきものがないか確認して、拾った方が良いものがあれば、それを取り込み、最初の20の仕上げをする。と言う感じで進めることが多いです。
最初から100を全部均等に完璧に仕上げようとすると終わらないので、19の「逆算して作業プランを作る」のと合わせて、21を実施するような感じですね。
あと、16の「議事録」や22の「課題管理表」は、それほど重要度が高いとも思いませんが、ベテランでも議事録にToDoや決定事項が書いてなかったり、課題管理が追こなれていなかったりすることもあるので、出来ていないと痛いスキルではありますね。。。
それはさておき、最後(4つ目)は、ビジネスマインドです。こちらは、以下の8個が挙げられています。
23. ヴァリューを出す
24. 喋らないなら会議に出るな
25. 「時間はお金」と認識する
26. スピードと質を両立する
27. コミットメント力を学ぶ
28. 師匠を見つける
29. フォロワーシップを発揮する
30. プロフェッショナルのチームワーク
この章の内容は、どれも非常に大事だと思います。
ただ、28の「師匠を見つける」のだけは、出来てなかったですね。誰か特定の一人って意味では。
若い頃は紆余曲折あって、周りに師匠としたい人がいなかったので、どちらかというと反面教師として、周囲の人たちのほとんどを逆師匠にしていた感覚があります。
いまは、縁あって周りに優秀な方が多いので、それぞれの方の良いところを真似しようと背伸びしているところです。特定の人を師匠と思ってはいませんが。
あと、こう書くとなんか上から目線になってしまうのですが、いわゆるローパフォーマーな人って、23~25を全然意識してないですよね。
自分の作業がどの様な付加価値を出すのか?なんて考えていないし、会議でも促されない限り絶対発言しないし、自分の時間だけではなく相手の時間を浪費させても全然気にしない・・・うーん。。。
あと、ローパフォーマーな人に決定的なのは、コミットメント力がありません。まず何かを絶対に達成します的なコミットメントをしたがらないですし、期限付きで作業を任されたり成果を求められても、何がなんでも達成する意識と言うか気迫というかが無いですよね。
まぁ、いまどき、下手にコミットを求めるとブラック扱いされかねないので、難しいところですが。
それでも、お客様と約束したことは守ろうよ・・・と思うのですけど。平気で期日を破ったり、質の低いものを出したりしてるのを見ると、ガッカリします。
さてはて、なんだか全体に触れたら長くなってしまいましたが、本書はビジネススキルの基礎本としては非常によく纏まっている書籍だなぁと思います。
実際には、一読しただけではすぐに出来ない内容も多いように感じますが、意識することで徐々に改善されることもありますし、実務を通じて鍛えることもできると思うので、一年生社員だけではなく、私のような中年社員も読む価値があるんじゃないかと思いました。
という訳で興味を持たれた方がいたら、ぜひ読んでみてください。
ではでは。