最高の体調 ACTIVE HEALTH(一部でも実践すると効果ありそう)

書籍『100の科学的メソッドと40の体験的スキルから編み出した 最高の体調 - 進化医学のアプローチで、最高のコンディションに導く』を読みました。 

 

このところ、自分の興味が「仕事の効率化」と「健康」に向いているので、それに関する読書が多いのですが、この書籍はその両方に跨るような内容になっています。

 

鬱病、肥満、散漫な集中力、慢性疲労、モチベーションの低下、不眠、弱い意志力など、一見バラバラのように見える問題も、根っこまで下りれば実は同じもの。「文明病」という考え方でその正体を暴き、科学的な根拠のもとで実践的な対処法を解説したのが本書になります。

 

本書ではまず、「進化医学」という概念を説明しています。

「進化医学(ダーウィニアン・メディスン)」とは、進化論をベースに人間の病気の正体を考えていく学問だそうで、人体の様々な器官やその働き(器官の動き方)は、人類が進化をする過程で必要があって発達・獲得されてきたものなので、その器官・働きの原因となった環境や条件を考慮すると、なぜ各病気が発症するのか、その理由や正体が分かる(もしくは探る)というものになります。

 

例えば、現代病の代表例の一つである「肥満」の場合、人類の食欲中枢が発達したのが約200万年前であり、その頃の人類は狩猟採集生活を送っていました。当時は、高カロリー(高脂肪・高糖質)な食事が生き残るうえで有利であり、その様な食事を好むように人体は進化しました。

しかしながら、近代に入って以降、急激に食糧事情が変わった為、現代のような食料が豊富な「肥満環境」に、人体は(遺伝子レベルでは)まだ適応していません(農耕生活が始まったのが、1~2万年前と言われていますし、先進国のみですが、飽食の時代と言われるようになったのは、ここ100年くらいの話でしょうし・・・)。

 

また、ストレスの対処についても同様に、人体の進化が現代の環境に追いついていないと考えられています。

脳の一部に偏桃体という部分がありますが、これは脳に備わった警戒システムで、身の回りに危険が迫ると活性化し、緊急事態に備えるように体に指令を出します。その結果、内分泌系がアドレナリン、コルチゾール、ACTHといったストレスホルモンを分泌して体を戦闘状態に切り替えるのですが、これは、ライオンやヒョウに襲われたときに瞬時に全身を興奮状態に切替え、すぐさま逃げるか戦うかのどちらかを選択するための仕組みです。そして、事態が終わればストレスホルモンは役目を終え、すみやかに体はもとに戻っていくという訳です。

つまり、人体のストレス処理系は、森やサバンナで出会う緊急の危機に対応するために進化してきたシステムなので、短期的に終わる急性のストレスを捌くのは得意ですが、現代の慢性的なストレスに立ち向かうようにはできていません

 

このように、現代における病気が、進化の過程で獲得してきた人体の仕組みとどの様に不整合があるかを考慮・解明する学問が「進化医学」となります。

 

本書では、その成果を代表的な文明病である「炎症」と「不安」の2つに対して、それぞれの対策を3つの領域に分けて解説しています。(進化医学に関連する大量の論文を読み、それぞれの対処法を学び、実践してきたものをまとめたそうです)

 

◆炎症
「炎症」とは、体がなんらかのダメージを受けたときに起きる、有害な刺激を取り除こうと免疫システムが起動し、ケガ等を修復すべく働き出したときの状態です。擦り傷ができたあとの、ジクジクと液体が染み出し、軽い痛みとともに皮膚が赤く腫れ上がっていく様子が「炎症」です。これは、体表面だけではなく、体の内部にも起きます。

 

短期の炎症反応は免疫システムの正常な動作によるものなので問題ではありませんが、長期に渡ると、血管や細胞といった周辺組織にダメージがおよび、やがて全身の機能が下がっていくことにつながります。いわば、戦争が長引いたせいで水道管や電線が破壊され、やがて国力が下がっていくのに似ています(そして、各水道や電線がつながる設備も壊れていきます)。

内臓脂肪が蓄積すると、この炎症が全身に拡がり、糖尿病、心疾患など様々な病気を引き起こすので、肥満も「炎症」カテゴリの病気の1種となります。

また、慢性の炎症は、脳の機能にもダメージを与え、鬱病を引きおこすとも言われています。これらが文明病であると言えるのは、いまも狩猟採集などで暮らす伝統的な部族には、慢性炎症に由来する病気(糖尿病、鬱病、がん、など)がほぼ存在しないからです。

 

文明病が引き起こされる原因は、以下の3つのいずれかに該当すると考えられます。

  • 多すぎる:古代には少なかったものが、現代では豊富すぎる=カロリー、糖質、など
  • 少なすぎる:古代には豊富だったものが、現代では少なすぎる=睡眠(人体に必要な平均睡眠時間は7~9時間の範囲 & 良質な睡眠が必要とされる)
  • 新しすぎる:古代には存在していなかったが、近代になって現れたトランス脂肪酸 ⇒ 肝臓の働きを乱す(新しすぎてうまく処理できず悪玉コレステロールを製造してしまう)、孤独 ⇒ タバコや肥満と同じくらい全身に炎症を起こす、デジタルデバイス ⇒ 睡眠時間を削り、過剰なコミュニケーションは人間関係の不安を増大する・・・

 

「炎症」の対策では、「1.腸」、「2.環境」、「3.ストレス」の3つに分けて解説しています。

具体的な内容は本書を読んでいただきたいのですが、なぜそれぞれの領域が炎症に影響するのか、どの様な対策をすると良いかが具体的に書かれています。

例えば、腸内環境を改善するのに、どのような食事をすると良いか、サプリメントならどの様な成分のものがお勧めなのか、とかですね。

環境(自然)に関する対策やストレスへの対抗策も具体的に書かれています。

 

◆不安
「不安」自体は古代からあったと思われますが、それらの不安は原因も対処法も「はっきりした不安」で悩む要素が少なかったと考えられます。

 

それに対して、現代の不安は「ぼんやりした不安」であり、原因も対処方法も良く分からない不安です。

「将来どうなるかが分からない(仕事や健康)」、「対処方法が分からない難しい問題(人間関係など)」、「多様な価値観(自分がやりたいことが分からない)」、などなど。

言い換えると、目的(自分は何をどうしたいのか)が分かっていない上に、対処方法(問題が大きく複雑なため、どのように対処すれば良いか)も分からないような不安となります。

 

ちなみに、不安障害は、近代化レベルと明確な相関関係があり、先進国では不安障害の発症率が8%前後なのに対し、発展途上国では不安障害の発症率は0.1%にしか過ぎないそうです。

この「不安障害」は、発症したことがない人にはイメージが湧かないと思いますが、記憶力、判断力を奪い、死期を早めることが分かっています。死に至る病気であるという点では、「慢性炎症」が引き起こす様々な病気と同じようにとても怖い障害なのです。

また、クオリティ・オブ・ライフという観点でも、著しく悪化するので、その点でも恐れるべき症状だと思います。

 

ところで、そもそも「不安」という感情がなぜあるかと言うと、もともとは物陰(木や岩の向こう側とか)に脅威となるような動物がいるんじゃないのかとか、この植物は食べたら危ないかもしれない、などのアラームを働かせるものとして備わったものと思われます。

人間の感情のなかでは、ネガティブな感情の方が、ポジティブな感情よりも強いことが分かっていますが、これは、上記の様に、古代の環境において生存の危機の対処に必要だったためと考えられます。

しかしながら、こうした古代の狩猟採集生活時代の「不安」は、「今」という「瞬間」における「不安」であり、長くても「今日」一日分の「不安」でしかなかったと考えられます。複数の調査によると、現代でも狩猟民族は、毎日「今日」を生きることに集中していて、明日以降のことはあまり考えないようです。

 

それが変化したのは、2万3000年前~1万1000年前に、農耕生活が始まってからと考えられています。農耕を行うためには、種を撒いてから収穫するときまで、先のことを考える必要が出てきますので、短くても数か月、長ければ1年先のことを考える必要が出て来たのだと想定されます。

この「時間間隔の変化」は、非常に大きな変化でしたが、それまでに備わった(そして今も備わっている)ヒトの不安システムは短期用のプログラムのため、うまく対処できていない可能性が高いのです。


さて、この「不安」への対処法については、「1.価値」、「2.死」、「3.遊び」の3つに分けて解説しています。

自分が何を大事にして生きるのかという「価値観」をどうやって明確にするのか、「死」とどの様に認識し向き合えば良いのか、生きる上での様々なこと(仕事・家庭・人間関係・など)に「遊び」の要素を含めるとどの様に効果があるのか、などを具体的な方法と合わせて解説しています。

 

先ほどと同様、内容は本書を読んでくださいなのですが、遊びの章に書かれていた「3のルール」(下記)はシンプルで即実践可能そうなので、早速取り組んでみようと考えています。

 3のルール

  • 今日やり遂げたいことを毎朝3つ書き出して実践する
  • 今週やり遂げたいことを週頭に3つ書き出して実践する
  • 今月やり遂げたいことを月初に3つ書き出して実践する
  • 今日やり遂げたいことを年始に3つ書き出して実践する
  • 毎週末にレビューを行い、上手く行った点を3つ、改善できる点を3つ書き出す

 


ともあれ、本書は全体的に論理的で分かりやすく、対策も具体的に書かれているので、読んで損はないと思います(部分的には、納得いかないところもありましたけどね)。

ただ、全部を実践しようとすると量が多くて破綻しそうなので、「炎症」と「不安」でそれぞれ1つか2つずつ実践に移していくと良いと思いました。

私自身は、「炎症」対策は「毎日の食物繊維の量を増やすこと」、「不安」対策は「3のルール」を実践に移してみようと考えています。

もしこのブログを読んで本書を読まれた方がいたら、ぜひ、1つで良いので実際に対処法を実践してみていただけたらと思います。


ではまた。